#144 birth

Jun. 24, 2014

去年、ウガンダの村をおとずれたとき
「赤ちゃんが生まれたんだ!」と彼は笑顔で言った。
私が初めてこの村に来たとき、彼は10才の少年だった。

その少年がまっすぐに成長して、父親になったこと。
長年続いた戦争の暗い時代をのりこえて、こうして命がつながっていくことが嬉しかった。

「日本にはいつ帰るの?」
「あさって。赤ちゃんは?」
「まだ病院だ。じゃあ次に来たときは抱っこしてやってくれ!さ、仕事に戻らなくちゃ!」
彼は村の並木道を、さっそうと駈けた。
その背中は、いつもより大きく見えた。
「むかしはやせっぽっちの少年だったのにね」
その場にいた友達と、笑い合った。

その日の帰り道は美しい夕暮れだった。
まっすぐ続く村の一本道には、帰路を急ぐ人びとの姿。
私たちは、新しい命をつなぎながら生きていく。
その奇跡をかみしめながら、私は写真を撮った。
生きていることを強く感じた。


その赤ちゃんが亡くなったことを知ったのは、先週のことだ。
彼の弟からのメールに
「彼は赤ちゃんを失った。今から赤ちゃんを埋葬する。1才だった」と書いてあった。
やせっぽっちの彼の背中を思い出した。

一見、穏やかに見えるアフリカの村の暮らし。
でもそこには、はかることができないほど深い悲しみもある。
戦争が終わってもその物語は続いていく。





IMG_1226.jpg