#142 雨と紅茶

Jun. 6, 2014

雨が降ると、やっぱりウガンダを思い出す。

雨の日にはよく、村で熱い紅茶を飲んだ。

90才になるアチョリのおばあちゃんが、私のカップにもなみなみと紅茶を入れてくれる。

砂糖はスプーンに山盛り3杯。それがおばあちゃんのせいいっぱいのおもてなし。

紅茶を飲みながら、小さなラジオに耳をかたむける。

ラジオからは、アメリカのヒットチャートが流れてる。

おばあちゃんはちょっとリズムにのって体を揺らして、笑う。

その場にいた近所のおじさんと子どもたちも一緒に笑う。

音楽の合間には、戦争のニュース。

おばあちゃんはじっとラジオを聴いている。

おばあちゃんは夫を戦争で亡くした。

 

紅茶がさめるまで、ラジオを聴きながら雨を眺める。

おばあちゃんちの土壁の茶色が、雨に濡れて色がかわっていく。

それだけの時間が、なんて豊かなんだろう。

大切な人たちと、同じ時間を共有する。

今日も生きているなーと思う。

とりあえず、悲しいことも悩みごとも、ラジオと雨の音にかき消そう。

がんばってもどうにもならないことは、笑い話にしてみんなで笑ってしまおう。

甘い紅茶を飲んで、忘れてしまおう。

 

雨の音が小さくなって、私は村を発とうと立ち上がる。

awpoyo chai, jaja (紅茶をありがとう、おばあちゃん)、と言うと

ber(どういたしまして)、とおばあちゃん。

 

バイクタクシーにまたがって、町へ向かう。

振り向くと、手を振るおばあちゃんの姿が草むらのむこうに小さく見えた。

その瞬間はいつも、おばあちゃんの村に引き返したくなる。


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gulu, Uganda 2013