#94 熱い紅茶

Jan. 16, 2012

ウガンダの友人からのメールは
日本にいる私にいつもうれしいニュースを届けてくれるけれど、
時には悲しいニュースが届きます。


大切な友人のひとりが先月、亡くなりました。

彼はエイズを発症して亡くなったそうです。
30歳。奥さんと小さな子どもがふたり。
やり残したことがたくさんあると思います。


少年のころ兵士として戦っていた彼のからだのあちこちに
その傷あとが残っているのを見せてもらったことがあります。

学校に通う機会がなかった彼は、文字を読むのも書くのもできなかったけれど
練習して書けるようになった自分の名前を、嬉しそうな顔で私に見せてくれました。
そして彼は私のアチョリ語の先生でもあり、いろんな単語を教えてくれました。

彼は、私が関わっていた子どもたちの避難シェルターで門番をしていたので
眠れない夜は、夜通し見張りをする彼と一緒によく熱い紅茶を飲みました。
アフリカの闇夜の、アルコールランプと片言のアチョリ語と、満天の星空。
今でも紅茶を飲むと、そのときのことを思い出します。

ゲリラ軍がいつ現れるかわからない真っ暗闇の中の、小さな光と紅茶の湯気。
戦争という大変な状況の中でも、穏やかで優しい時間が流れていたこと。


私がグルでひとりで行動することがないように、
いつも私をエスコートしてくれたのも彼でした。

自転車のうしろにもよく乗せてもらったし
いつも私が作る(おそらく微妙な味の)アチョリ料理の試食もしてもらいました。
おいしいときは無言でむしゃむしゃ食べてくれて、
おいしくない時は笑いながら、それでも食べてくれました。

300人の子どもたちのクリスマスパーティのために
ふたりで汗かいて人数分のジュースを運んだりもしました。

一緒にすごした時間が多すぎて、ぜんぶを思い出すことができません。


彼の最期のことばは「病院に連れていってくれ」だったそうです。

そう言って上着をとろうとして倒れて、そのまま亡くなったのです。
最期まで生きようとしたのが彼らしくて、
そして最期の瞬間に彼がひとりじゃなかったことがわかって
少しだけ救われたような気がしました。


彼の冥福とともに、エイズの犠牲になる人が少しでも減ることを
祈りたいと思います。
それから、彼のように戦争に人生を翻弄される人がいなくなりますように。


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2006 Gulu, Uganda