#65 風邪と平和

Apr. 12, 2010

今日、息子が生まれて初めてまともに熱を出した。
健康だけが自慢のうちの息子。

いつものいたずらが今日は冴えなかった。
せっかく焼いた夏みかんのケーキも残したからおかしいと思っていた。
大好きなお風呂でも不機嫌だった。

夕方、ごはんをひとくちだけ食べて、息子は吐いてしまった。
熱がある。風邪かな。

いつか来るとは思っていたけど
子どもが寝込むとこんな気分になることを初めて知った。
ただの風邪だとわかっていても心細い。
なんでもいいから早く元気になってほしい。
いつもの笑顔が早く見たい。


ウガンダ北部の避難民キャンプに行くと
いつもたくさんの母親たちに囲まれた。
「病気の子どもに食べさせたいからお金をちょうだい」

あのときの母親たちの目を思い出した。
なにかに必死にすがるような目だった。

私はいつも、そのときの手持ち金と相談して
お金をあげたりあげなかったりした。

お金をあげると、泣いて喜ばれることもあった。
うちへ来てぜひ子どもに会ってちょうだいと言われた。
雨もしのげない小さなビニールテントの下で、
病気でぐったりした小さな赤ちゃんを見て涙が出たこともあった。

そのときの私は私なりに真剣だった。
でも、今ならもう少しちがう行動に出たかもしれない。

お金をあげないと、石を投げられたこともあった。
私はとても悲しい気持ちになったけど、
今なら少しちがう気持ちになったかもしれない。


私は今、あたたかい家にいて雨風をしのぎ、
息子をふかふかのふとんに寝かせることができて
栄養のある食べ物を与えることができる。

これはすごくしあわせなことだ。


息子を産んだとき、その幸福感に包まれながら、
私はなぜかウガンダで見聞きしたたくさんの失われた命を思った。

人が産まれるとはこんなに素晴らしいことなのに
その命が理不尽に奪われていくことへの深い悲しみを感じた。


息子が風邪をひいただけで世界の色がより深く、濃く見える。
子育てをしながら私も成長させてもらっている。
人の命は重い。

息子よ、早く元気になあれ。
そして世界中の戦争が一刻も早くなくなりますように。
それは私たちにとって遠い国の話ではないのだから。

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後日談:
息子は翌朝、けろっとして起きてきました。