#54 話しかけられること

Jan. 21, 2010

私は、知らない人によく話しかけられる。

道をたずねられたりするのはよくあることで、
天気の話とか、世間話、悩み相談までされることもある。

ちょっと大きい駅に行くと、宗教やら手相やらエステやら、
いろんな人に話しかけられて忙しい。

子どもの頃からそうだった。

高知では有名な帯屋町太郎さんという人がいた。
帯屋町というアーケード商店街の中を
「わあああ!」といいながら走るおじさん(元気かなあ)。

私はよく至近距離で「わああ!」と言われるのと同時に頭をたたかれていた。
げんこつでゴンっと‥。

とにかく、よく知らない人に話しかけられたりちょっかいを出されたりする。
東京に出てきたら、東京の人口に比例してますますその数は増えるばかりだ。
いいこともあるし、悪いこともある。

でもたいていはいいこと。

息子と出歩くようになって、ますます知らない人に話しかけられる確率が上がった。

今日も息子はパワーが有り余っていて、
駅の改札の床の上に寝転がってぐずっていた。
はあ、どうしようかな、と困っていたら、通りすがりのおじさんが足を止めた。

「ぼうや、おじさんとじゃんけんしよう」
おじさんはしゃがみこむ。息子はきょとんをしてぐずるのをやめた。
「じゃんけんでぼうやが負けたら、げんこつで頭をゴンってするぞ」
えっ、それはちょっと困ります、と心の中で思う。
「ぼうやが勝ったら、おじさんも一緒に床の上でごろごろしてやるぞ」
えっ、それも困りますけど。

あいにく、うちの息子は1歳でまだじゃんけんができないのでよかった。
ゴンっもごろごろもなかったので、安心した。
じゃんけんおじさんのおかげで、息子は機嫌よく電車に乗ってくれた。


最近、私ひとりで仕事の取材に行ったときのこと。
取材では見知らぬ町に行くことも多い。
その朝は天気がよくて、私はとてもおなかがすいていてがまんできなくて、
家で作ってきたサンドイッチを歩きながらぱくっとひとくち食べた。

すると、うしろから「おいしそうだなあ!いいなあ!」と声がする。
清掃の仕事をしているおじさんが、ほうき片手にこっちを見ていた。
「なに、手作り?いいねえ。それは格別だねえ。今日1日がんばんなよ!」
おじさんは満面の笑み。おじさんのうしろには朝日が光っていた。
「おじさんも良い1日を」

そんなやりとりがあるだけで、
見知らぬ町がなんだかとても好きな町になるから不思議。


今までは、知らない人に話しかけられることをたまにいやだなと思っていたけど
今はけっこう好きだ。

ちなみにアフリカでは、目が合ってあいさつをしない方が失礼なので
どんな人もよく話しかけられると思う。
いくらむすっとしていても「話しかけるな」オーラを出していても
かまわず、あいさつから世間話まで、すらすらと話しかけられます。
あ、女性ならその会話の中で必ずプロポーズされます。
されたい女性はぜひアフリカへ。


ちょっとお知らせです。
カメラ雑誌「CAPA」2月号に私の対談記事が載っています。
本屋さんで見かけたら、ぜひ読んでみてください。
「ドキュメンタリー写真家をドキュメントする」というページです。

対談をしたのは今岡昌子さんという方で、とても素敵な写真を撮っています。
http://www.re-birth.net/
ふんわりしているようなサバサバしているような、魅力的な方でした。
写真やアフリカを通じて素敵な人に出会えることは、とても嬉しいです。

対談記事には、アフリカに行き始めた頃や写真を始めたきっかけなど、
なんだか自分でもなつかしくなるような内容が載っています。
あの頃はこうやって知らない人に自分の写真を見てもらったり
文章を読んでもらえるなんて、思いもよらなかった。

その頃のことはちょっとはずかしいような気もするし、
ほろ苦い思い出もたくさんあるけど、なんだか青春だったなあと思います。
でも何歳になっても青春。これからもがんばります。

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むかしのことを思い出すとなぜか行きたくなる、
というか高知に帰ったら必ず行く、大好きなカフェ。
ここでマスターとレコードを聴きながらアフリカの話をして飲むビールは最高。
あ、妊婦だからビールはしばらく飲めないか。