#21 山と山は

Jun. 4, 2009

「山と山は出会わないが人と人とは出会う」

アフリカのことわざです。



先日、仕事である会社へ取材に行ってきました。
企業取材の仕事ではおもしろい人にたくさん出会えるから好きだ。

ライターさんがインタビューしているあいだ、
私は話している人の写真を撮る。

ファインダー越しに、子どもみたいに目を輝かせて話すその人は会社の社長さん。
その強い光に思わずファインダーをのぞくのをやめる。話にぐいっとひきこまれる。

その会社は、コンサルタント業を主にしているはずなのに、
社長さんは目をキラキラさせながら言った。

「今度、インドに居酒屋を出すんですよ」


なぜインド?なぜ居酒屋?
話にどんどん引き込まれていった。

そういう人は同じ背景で同じように撮っても他の人とはちがう写り方をする。
オーラがすごい。話がおもしろい。それに行動が伴っている。

社長さんのビジョンの先には「日本を変えたい」という熱い思いがあった。
その思いは会社全体で共有されていた。
本当にこの会社が日本を変えるかも、と思った。

そういう人に出会うとわくわくする。



インドの話からなんとなくアフリカの話になる。
アフリカの話をすると、だいたいの人がいろいろ質問してくれる。
その社長さんは私にこう尋ねた。

「アフリカの内戦なんかを目の当たりにしてたら、僕の話なんて薄っぺらにきこえますか?」

答えはノーだ。



たしかに、平和が当たり前の日本ではなにもかもがのんびり見えることもある。
ウガンダでいつゲリラ軍が来るかわからずおびえる子どもたち。
実際にゲリラ軍に誘拐された子どもの、輝きを失った瞳。

私の目の前で、命を失おうとしている人たち。

それは何度も夢に見るシーンだ。これからもずっと。



でも、その社長さんの話を薄っぺらだと思わなかった。

たしかに、明日生きるか死ぬかの生き方じゃないかもしれない。
日本では当たり前のように水道の蛇口から水が出るし、夜も電気が煌々とついている。
私たちは医療もうけることができるし、明日の食べ物を心配することも少ない。

大切な人を失わないように努力することができる。



グルで出会ったある女性の言葉を私は忘れない。

「生まれたばかりの私の赤ん坊とそして私の夫が、ゲリラ軍の兵士に殺された。
私の目の前で、串刺しにされてまるでバーべキューのように焼かれたの」

涙も流さずに彼女は言った。



それでも、彼女は生きていた。
なんとか希望を見つけて、一生懸命生きようとしていた。

比べるものではないし、優劣をつけるものでもないけれど、
私が出会ったその会社の社長さんも、彼女とおなじぐらい一生懸命生きようとしていた。
そういう人だけが持つ目の光があった。



今、自分が置かれている状況でベストを尽くすこと。
一生懸命生きようとすること。大切な人を大切にすること。

それが、とりあえず私たちにできることだと思う。
そうすることがグルで出会った彼女に、私が唯一できることなんじゃないかと思う。



私たちは山じゃないから、人と出会うことができる。

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